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【開催報告&当日動画】柏のまちづくりに関する研究・制作 学生発表会

■開催概要

・開催日:2022年3月29日(火)13:30-16:30

・開催場所:パレット柏 オープンスペース

・参加者:視聴者 23名

・内容:学生発表、全体講評

・学生発表者:6組(10名)

・ゲスト:小野 宏哉(麗澤大学 教授)、前田 英寿(芝浦工業大学 教授)西田 司(東京理科大学 准教授)、髙栁誠也(東京理科大学 助教)

 

・参加費:無料

・主催:一般社団法人柏アーバンデザインセンター(UDC2)

・共催:柏市

 

 

■学生発表リスト

                   

■当日の動画

→動画その1:

「エリアビジョンの傾向及び将来像実現に向けた取り組みとの関係-エリアビジョンの構成・内容及び検討プロセスから取組の実態まで」藤田涼平、 一之瀬大雅(日本大学理工学部 建築学科4年)*都合により、講評部分のみ

→動画その2:

「800mの公民館―小さな風景からつくられる公共―」大山優(東京理科大学理工学部 建築学科4年)

→動画その3:

「柏そごう跡地利用計画」海江田篤 (武蔵野美術大学造形学部 建築学科4年)

→動画その4:

「LiDARを用いた人流計測」北村春佳、 湖東陸、 佐藤良介

(東京大学大学院新領域創成科学研究科 社会文化環境学専攻 修士1年)

→動画その5:

「パブリックライフとパブリックスペースの観察的計画」安慶名駿太、伊藤亜沙人

(芝浦工業大学大学院理工学研究科 建築学専攻 修士1年)

→動画その6:

「歩行者天国実施時の歩行者挙動特性に関する研究- スマートフォンG P S とL iD A R を用いた分析-」

野上昌孝 (東京大学大学院新領域創成科学研究科 社会文化環境学専攻 修士2年)

→動画その7:全体講評

 

■主要な講評の概要

(Q:ゲスト等の質問、A:質問に対する発表者の回答、C:ゲスト等のコメント)

1.「エリアビジョンの傾向及び将来像実現に向けた取り組みとの関係-エリアビジョンの構成・内容及び検討プロセスから取組の実態まで」について

Q:2011年を境にエリアビジョンが増えたのはなぜですか。

A:この年に緩和された制度が多かったためだと考えています。

 

Q:柏はこのエリアビジョンに沿った活動ができていると思いますか。

A:はい、活動できていると思います。

 

Q:相対的に見て、柏のエリアビジョンの特徴はありましたか。また、効果的なエリアビジョンとはどのようなものだと思いますか。

A:雑な地域もありましたが、柏は丁寧に書かれていてよくまとめられていたと思います。エリアビジョンは行政計画ではなく法的拘束力がないため実現が難しいが、はじめやすいのではないかと思います。エリアビジョンの共有が大切だと思います。

 

Q:UDC2のこれまでの取組でエリアビジョンに位置づけるのが難しいものはありましたか。

A:サポラリーの位置付けは難しかったです。

 

2.「800mの公民館―小さな風景からつくられる公共―」について

Q:駅から少し距離があり現実的??ではないと思いますが、実際にどのようにこの計画を行うつもりですか。

A:長いスパンで徐々につくっていくイメージで考えています。

 

C:柏の建築のあり方の1つの指針となっていると思いました。

 

C:小さな発見が見方を変えれば愛着のわくものになるという考えがとても素敵だと思います。

 

Q:柏駅から離れたこの場所を選んだ理由は何ですか。

A:自分も柏生まれ、柏育ちなのですが、もともと馴染みのある場所で設計したいと思っていたので、柏を対象地にしようと思っていました。最終的にここに決めたのは、第一印象、直感です。都会でも田舎でもない曖昧な場所、高低差のある感じが魅力的に感じたのだと思います。

 

3.「柏そごう跡地利用計画」について

Q:なぜ柏そごうを対象地にしたのですか。

A:私自身が柏生まれ、柏育ちで、そごうを見ると柏に帰ってきたと感じます。そのような街のシンボルが使われていないという状況に違和感を持ったので対象地にしました。

 

Q:民間デベロッパーが実際にそごう跡地計画を進めていますが、どうしたらこの提案を説得できると思いますか。

A:柏は居場所となるような空間が少なく、住民はそごうを柏のアイデンティティの1つだと考えているということを伝えたいです。

 

Q:商業ビルではなく、全体を立体公園にしたのはなぜですか。また、この提案を実現できると思いますか。

A:本当に実現できるかと言われると難しいと思います。ですが、全体を緑にすることでより強く、こういう場所が必要だと言えると思います。一市民として、普通の商業施設より緑や居場所のある場所を提案してほしい、という願いも込めています。

 

Q:特徴的なファサードですが、ファサードと建物や人との関係はありますか。

A:このファサードは特徴的なので残したいということは考えていましたが、単純に窓にしたら可愛いと思っていました。外からも魅力的に見え、中からは柏のまちを展望できるような場所になったら良いと思いあえて開口部にし、外にも中にも開いたデザインにしました。

 

Q:ペデストリアンデッキとの関係はありますか。

A:ペデストリアンデッキは通り過ぎるだけの場所でしたが、建物ができることで変わると思います。人の賑わいを見る、見られるという関係が生まれると考えていました。

 

C:銀座ソニーパークのように暫定的な利用でも良いので、実現できたら良いなと思いました。

 

4.「LiDARを用いた人流計測」について

Q:計測限界はありますか。

A:どのくらい漏れがあるのかは調査できていません。経路ごとの軌跡と照らし合わせると、不備があった部分や死角で測れていない部分があったことは確認できました。

 

C:什器の裏は単純に計測できていなかった部分もあると思います。什器裏に人がいないと決めるのは早いと思います。

 

Q:滞留とする量はどのように決めましたか。また、時間による滞留の件数の変化にどのような要因があると思いますか。

A:アクティビティ調査をした上で、1分くらいから滞留と言えるのではないかと話し合って決めました。アクティビティ調査の結果から、昼の方が多様なアクティビティが見られたので、そういう点が昼の滞留者の波が違うことの要因になっていると思います。

 

C:ピーク時間の測定は必須だと思います。もっと朝早く、夜遅くまで調査できると良いと思います。1番人が多い時間で測定して初めて、ファニチャーは本当に邪魔ではないのか分かると思いました。

 

C:どっちの方向から来る人が多いのか、什器とさらに関連づけた分析もできたら良いと思いました。

 

5.「パブリックライフとパブリックスペースの観察的計画」について

Q:これとこれを繋いでさらにこういうことができる、このスペースはこの課題解決につながるというような予測はありますか。

A:提案したような空間ができれば、滞留は増えると思います。また、柏レイソルやストリートミュージシャンなどの地域独自のものが、目に見えて、通るだけで分かるような空間ができればより柏らしさが出ると思います。

 

Q:柏だからこそできること、柏以外でもできること、柏以外でもできるが柏でやるとより効果的なこと、はありますか。あれば特に後者について聞きたいです。

A:大階段と柏ならではの文化のストリートミュージシャンを組み合わせた提案のエキウラダイブタイです。柏のウラの場所なのですが、ストリートミュージシャンと結びつくことでより明るくなれば面白いと思います。また、大階段の下には昔からある店もあり、柏の文化やアットホームな雰囲気を感じられるので、柏ならではのポテンシャルだと思います。

 

C:場所を点でなく、線、面として考えられると良い。たとえ小さい場所でも人が集まれば良い場所になる可能性はあります。

 

Q:発表するにあたって他の人の提案もまとめたと思いますが、全体の提案を整理して感じたことはありますか。

A:駐車場を活用した提案が多かった印象ですが、よく見たらそれ以外もたくさんあると感じました。

色々なソフト面をさらに融合することで新たな提案ができるのではないかという面白さがありました。

 

Q:好きなパブリックスペースを教えてください。また、提案した中でお気に入りのパブリックスペースはありますか。

A:自然も人も感じられる場所が好きです。サッカーが好きなのでレイソルの提案です。

何もないところで寝っ転がれる場所や、川など水を感じられる場所が好きです。

 

Q:大階段の提案の場所は近くに病院があったり、レイソルロードを歩くところにはラブホテルがあったりしますが、周辺との関係でパブリックスペースがどうあったらよいかなどはどのように考えていますか。

A:レイソルロードについては、周辺の飲食店のにぎわいを生み出すような設えにしたいと考えました。実際に見に行って、病院から出てきて、階段で休んでいる人もいたので、そういう人を巻き込みたいと考えました。

Q:提案自体は面白いと思いますが、逆に迷惑になりはしないか、実施に向けて周りを納得させることができるか、など研究室で議論はありましたか。

A:迷惑になるという考えもありましたが、時間帯や場所を選ぶことで改善できるのではないかという議論になりました。提案によってマイナスの意見もでると思いますが、それ以上にプラスの意見を強くできれば実施にむけて周りを納得してもらうことができると思っています。

 

6.「歩行者天国実施時の歩行者挙動特性に関する研究- スマートフォンGPSとLiDARを用いた分析-」について

Q:目的地の種類に違いはありましたか。

A:お昼くらいまでは目的地のある人が多く、ヨーカドーなどへ買い物に行く人が多かったです。夕方くらいになると特に目的地がなく、歩いているだけの人もいました。

 

Q:この調査から歩道や車道の設計要件などは分かりましたか。

A:ハウディモールでしか調査を行っていないので他と比較したわけではありませんが、体感では歩道の高さや店舗の種類によって人の流れは変わると思います。

 

Q:どこにどのくらい手を入れることで、歩行者天国と認識してもらえるようになると思いますか。

A:車道を歩いてもらうということだけ考えると、案内などを立てるだけでも変わるのではないかと思います。

 

Q:計測した総量はどのくらいですか。また、ステップワイズ法で排除されたもののプロセスを教えてください。

A:スマートフォンの調査量はわずかです。 LiDARでは、車道から歩道へ上がった人は排除されています。

 

Q:歩行者天国の認知について、歩道の高さなど構造的な話をしていましたが、アンケートなどで数字は出ていますか。仮に歩道と車道の高さを揃えたら効果はあると思いますか。

A:実際にアンケート調査等で声は得られませんでした。普段から柏を利用しない人からすると歩道の高さや舗装が違うので、歩いて良いのか分かりづらいと思います。舗装は効果あるかもしれないと思います。

 

■全体講評

ゲストクリティーク

〇髙栁先生

こういう機会を毎年やるべきだと思います。全国であらゆる卒業設計や研究発表はありますが、大学を超えて、エリアでくくって実施するというのは非常に新しいと思います。このようにエリアでくくることで、設計の提案と研究発表がリンクする部分もでてきます。企業ではアイデアハッカソン的なことをしますが、まちづくりではこういう発表機会がそういう場所になると思うので、来年もできると良いなと思い、聞いていました。学生の方は、市の方とか地元の方とかとアフタートークをして、自分の中で血肉にしていくと良いなと思いました。

 

〇西田先生

6組の学生の発表がありましたが、印象的だったのは、パブリックスペースに関する発表が多かったことです。まちづくりというと、どうまちの中の不動産価値を上げていくのか、といった施設整備の話になりがちですが、そうではなく、公共空間とかそれをどういう風にビジョン化していくかという発表が多くありました。パブリックスペースの中を観察していくことによって、小さな公共が生まれていたり、その小さな公共をどう動かしていくのかという手法が多く感じました。

また、柏の街のなかに学生たちが入っていって、色んな目線で見ていくと、色々な資源や使える場所があるのではないか、といった視点が生まれてくるので、多角的に柏の街が分析・提案されている点が面白いと思いました。

ここで研究して発表したこの先が大事だと思います。最後、野上さんの歩行者空間の発表がありましたが、この研究によって周りの店舗を変えていこうとか、安慶名さんや伊藤さんによる提案のように、柏の中にパブリックな種を埋め込んでいこう、という話になるかもしれません。これらの研究発表が、街にどう寄与して、逆にまちからの応答関係が生まれてくるのか、柏の街との繋がりがここから始まっていくというきっかけになりそうだなと思うので、これらの発表を是非UDC2が受け止めていただきたいと思います。これらの研究発表が、柏の街の期待値とリンクしていく感じが今日あったように感じましたので、今後も期待していきたいなと思いました。

 

〇前田先生

数値的に解析しようという研究と、提案型でデザインを見せるという発表が同居している発表会というのは、大学の中でもだいぶ減りつつあるのかなという気がします。大規模な大学であればあるほどに、減っているので、非常に貴重な機会だと思います。デザインを提案された学生さんは、数値解析された学生の発表を忘れない方が良いと思いますし、理論的に研究された論文の方は、最終的には成果がデザインとして実現されると良いなと思いました。

柏の駅前に関わらせて頂いて8年目になりますが、若い人たちに魅力的な街にしようとやってきました。その最大の成果は、コミットメントを感じられるか、というとこだと思います。

提案したものが実現していくと、柏ってやりがいがあるね、遊びがいがあるねということになります。それが一番の街の活性化なのではないかと思います。最近は共有という言葉が良く使われるが、共感といった皆がワクワクするという感覚というのは、リアクションから生まれてくると思うので、半分UDC2の実務に関わっている身としては心がけていきたいなと思いました。

 

〇小野先生

自身も、通勤路を使って、商店街の中などを歩きながら、中心市街地をどうしたら良いか考えていましたが、今日話を伺って、これらの提案や発表は、柏の街を変えていく種として使えるという感じがしました。

先日、東京都でスマートシティのシンポジウムがあり、東京は進んでいて、良いなと思いました。一方、柏はEコマースの波に取り込まれて、中心市街地も苦戦しています。しかし、今日の発表を聞いて、柏でもやればできるし、新しい技術に相応しい形で、皆で共有する場があると、もっと若い人たちも出てくるんじゃないかなと思いました。

 

その他の意見(地元の方々など)

〇地元の方1

一番最初に発表してくれたテーマが面白く感じました。全国に色んな街があって、街を良くするための色々な計画をつくっていて、隣の町と比べてみてどうなんだろう、という発想はありましたが、発表のように並べてもらうと、ああそうだよね、ということをすごく感じることができました。他の発表も楽しくて、そごうの跡地の問題も身に迫る問題として感じることができました。先生方から頂いたコメントも本当に今後に活かしていけると感じることができました。

 

〇地元の方2

大学の先生方が柏に来て、良く柏を見てくれているなあと感じました。それと学生たちがよく街を見て提案するという機会が、実はそんなに多くないのではないか、という風に思いました。初めて学生の発表を聞く皆様方は、とても時間を得たなと感じて頂いて帰って頂けるのかなと感じました。柏に住んでいる立場としては、提案されているものの中のいくつかが実現されて、また新しい場所が増えていくと良いなあと思いました。

 

〇UDC2

学生の皆さんが、こういうコロナの状況の中で学問に取り組んで、研究や制作としてまとめて、柏の街の現地で発表してくれたことがうれしく思いました。個別の発表それぞれは面白く拝聴しましたが、調査に限らず提案も含めて発表がなされることで、柏の街の総体が浮かび上がってくるような機会になったのかなと感じておりました。今日の発表を踏まえて、我々UDC2の方でも今後のまちづくりに取り組んでいきたいと考えております。

 

〇UDC2

今日の発表を聞いて一番感じたのは、対面て良いなあというのを強く感じました。本当に2年間コロナでテレワークも多く、会いたい方に会えず、先生方に合うのも2年ぶりくらいだったりしますし、ここにいらっしゃる方で久しぶりだなと感じる方もいっぱいいらっしゃいました。この同じ空気を一緒に味わうというのは、まちづくりにとって非常に重要なんじゃないかなと改めて強く感じたことでした。

提案は一つ一つ素敵だと思いましたが、日本大学のお二人の提案というのは、いわゆる建築の提案からは生まれてこないと思います。我々がつくっている柏セントラルグランドデザインというものを全国で比較して、どういう価値があるのかということを出していただいた、それをトップバッターでやっていただいて本当に有難い話だったなと思っていました。建築と都市デザイン・都市計画が横断的に一つの街について語り合う場とか、もっと高校生とか中学生とかが、SDGsとか柏の街で嫌だと思っていることとかを自由に語り合う場のようなものをどんどんUDC2が対面式で担保していけないかなとお話を伺っていて思いました。

今日は皆さんの顔を見れて、実際にお話ができたこと有難く思っています。本当に皆さま有難うございました。

 

■アンケート結果

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