まちづくりトークは、UDC2関係者に限らず広く市民の方々と一緒に柏のまちづくりに関係するテーマについて、知見を深め交流の場となることを目的としています。
今回のまちづくりトークでは、現在世界中で拡がる「ウォーカブル」について、ウォーカブルとは何か、国内外でどのような動きが生じているのかをゲストのお二人からお話を伺いました。ゲストは、様々な都市で研究実践を行う都市戦術家の泉山氏、ウォーカブルを推進する国交省から今氏をお招きし、柏の街のウォーカブルのヒントを探りました。
以下に、当日の内容をご紹介します。
※今氏、泉山氏のプレゼン内容については公表不可とのことでアップしておりません。
泉山さんのプレゼンを聞いて、ポテンシャルのある場所を見つけるうえで、場所も大事だけど人も大事だと思いました。仕事で行政の人と話すなかで、場所先行で考えがちだなと思うところがあります。私自身もそれが自然だと思っていたので、まだまだどういうニーズがあるのかとか、まちの人がどう思っているのかという考え方にシフトしていく必要があるということが分かりました。
ウォーカブルとプレイスメイキングは分断して考えないほうが良いと思いました。今回の事前打ち合わせの際に、リンクアンドプレイスのようなプレイスとプレイスをどう結んでいくのかが大事だよねという話になりましたが、新たにメルボルンの事例のシェアドストリートの話など、プレイス同士の間のストリートにもいろいろ属性があるということが改めて気づきがありました。
既存の道路を調査するときに、一般的には道路幅員や道路種別で調査することが基本だと思いますが、プレイスメイキングのような考え方に基づけば、今持っている場所の属性を細かく調査することで道路の色分けがもっと豊かになっていくと思いました。例えば、「銀行の場合は夕方に閉まるからその道路を利活用できる」や「沿道地権者が商業をやっているという理由でプロジェクトにコミットしてくれそう」という評価をしたり、さらにそれぞれ歩道の有無によって可能性は多岐に渡るでしょう。柏の道路利活用のポテンシャルを探るうえでまだまだ細分化できそうだと思いました。
まちによってはエリアマネジメントがあるところもありますが、これからプレイヤーを見つけていくときの壁として、そもそも道路空間が使えるという認識が市民にはないということがあると思います。小学校で公共空間の話をされることがなくて、親から言われていたこともありますが、「公共空間はなんかやっちゃいけないもの」という認識がどうしてもあると思います。「やっていいならこうしたい」と考えられるように、どう使えるのかということをしっかり示していくかということは重要です。海外の自治体では公共空間が地域のビジネスを支えていくような考え方が共通認識としてありますが、日本では「公共空間は民間の利益には貢献してはいけない」というマインドが歴史的にあると思います。これを今すぐ変えることは難しいですが、これからの公共空間を考えるにあたってこのズレに意識的になることは大切だと思います。そのなかで、UDC2が作成しているパブリックライフガイドみたいな環境をつくっていくことは、行政側でも大事ですし、市民側がチャンスにどんどん乗っていけるような仕組みづくりをする必要があると思います。
道路を使えるという認識がないというのは日本の感覚としてあると思います。道路交通法が厳しいので、遊ぶとか立ち止まって話す行為が法律で禁止されていますが、将来法律が緩和されていって、日常的にUDC2のストリートパーティみたいなものが開催されるようになったらいいなと感じます。
ハードルになりそうな要素の一つとして、車で移動したい人は多く、声が大きいことがあると思います。例えば、私の住んでいるまちでも、商店街を石畳で美装したのですが、車側の走りにくいという意見からアスファルトに戻ってしまったことがありました。まちの人の意識醸成から一緒にやっていかないと、反対の声に負けてしまうのではないかと考えています。
アデレードのシェアドストリートの事例は、実は車に乗りたいウォーカブル反対者との折衷案なんです。これは完全にフルモールにはしてなくて、スピードが落ちるけど脇道だから車も通れるような案に合意をとりつつ進めたものです。特にオーストラリアは車社会ですし、反対意見の人は一定数いるという認識を持つことは前提として大事だと思います。
先日歩行者天国で社会実験をする機会がありましたが、交通を止める箇所をどこにするかを決めるときに、マンションが少ないところや車を使う人が少ないところなど、止めても支障がない場所を根拠を持って選ぶことは大前提ですが、そのうえで遊びとか目的の価値を共有することが大事だと思います。道路でなにも催してないのに通れなくなることはストレスですが、賑わっていることをみせることで、「車は通れないけれどしかたない」と思ってくれる人を増やすなど、やって見せることは大切だと思います。
世代によって良いと思う話題が違いますよね。最近、賛同を得るのが難しいと思っていた高齢者にウォーカブルの考え方の紹介をしたときに、健康の文脈から説明したら「やっぱり歩かないとだめだ!」と公表だったことが意外でした。泉山さんのお話を聞くかぎりZ世代にささる話題は環境なのでしょうか。歩くことには様々な効果があると思うので、個別でしっかり説明することが幅広い層から支持を集めるには重要だと思います。
泉山さんが「ウォーカブルは場所と交通」と言ってましたが、もう一つあると思っていて、まちの人たち自身が当事者意識をもってライフスタイルを変えていこうという気概が必要だと考えています。特に、私は地方都市で超車社会を見ているからというのもありますが、「車依存になるのは仕方ない」だけではなくて、駅までバスで行くとか、ライフスタイルの変化を呼び掛けていく必要があると思います。
ウォーカブルをライフスタイルにするためにはウォーカブルシティにならなくてはいけない課題があると思います。15分歩くことを呼び掛けても、つまらないストリートだと精神的な距離を感じてしまいます。まち側が変わっていくこと、住民の意識側を変えていくことの両方重要だと思います。
このまちづくりトークには、きっとウォーカブルを実装したいと思っている人が集まっていて、どうやって推進したらいいのかということを悩んでいると思います。最初の一歩はどのように入っていくのがいいと思いますか。
魅力を伝えることが第一歩ですが、ウォーカブルは市民の方にも賛同が得やすい側面があるのかなと思っています。歩くことは健康に繋がりますし、認知症予防にもなります。また、最近ではゼロカーボンから歩くことを勧めるひともZ世代から出てくるでしょうし、市民生活に関わることだと思います。ウォーカブルになる価値やメリットが自分たちの生活に繋がることを発信してビジョンを共有することが第一歩として大事ではないでしょうか。
「人間にとって長い距離を歩くことは苦痛なのではないでしょうか」という質問がありましたが、私は逆だと思っています。人類の進化の観点で、ホモサピエンスが誕生してから狩りをして生活してきたので、そもそも歩かないとストレスを感じるようになっています。その点で、特に超車社会の地方都市の人の歩かなさは、いろいろな社会問題につながっていくと思います。
脳の仕組みは変わらないのにここ20年くらいで急激にスマホ社会に変わってしまったことで、精神に異常をきたしてしまったりなど、人類が根源的に持っているものとずれが生じてしまったことが最近のベストセラー本でも紹介されています。人間の精神を安定させるために必要な「運動」「睡眠」「人との関わり」の3つのうち、ウォーカブルは運動と交流が当てはまります。人との関わりのような交流は特に都市の本質なのでウォーカブルを支えていくような要素になってくると思います。今は都市計画だけではなく福祉や教育の要素も含んだものが「まちづくり」と呼ばれるようになっています。ウォーカブルはウェルネスの観点でも市民の賛同は得られやすいという側面がありそうです。
道路だけやってもまちは良くならなくて、1階2階までのアイレベルの空間をどれだけ一体的に居心地の良い空間にしていくことはまちの居心地の良さに直結するので、そこまではできるのですが、目的地をどう増やすかということが課題になっています。柏も歩行者通行量が明らかに偏っていて同じ問題を抱えており、「柏駅から半径500メートル圏内のまちづくりを頑張っても、その先に魅力がないと人は歩かないのではないか」という問いに答えることができず困っています。行きたい場所が都市にない場合はどう仕掛けていけばいいのでしょうか。
まちによっては正円の範囲をウォーカブルにする必要は必ずしもなくて、世代など属性によって目的地が微妙に違います。それこそ多様性だと思っていて、学生によっての目的地、高齢者の目的地が違うので、それぞれ場合分けをして丁寧に調べていくといいのではないでしょうか。
担い手として様々なプレイヤーが必要だと思いますが、まずは行政が方向性をしっかり定めるべきだと考えています。ただ、そのときに空間をどう使うかという話になると行政は苦手なので、担い手と協力して推進することが重要です。
日本のエリアマネジメントもコロナ以降変わっていくと思いますが、やはり地域民間だけでは厳しいのではないかと感じています。海外都市は自治体に都市デザイナーがいて専門的に推進していくので力がありますが、日本の場合は都市計画職があるわけではないので、地域の人や大学などが補わないといけないと思っています。特にウォーカビリティは研究調査が大事だと思っているので、アーバンデザインセンター(UDC)をはじめとする公・民・学連携が適しているのではないでしょうか。エリアマネジメントは研究開発能力がそんなに高くないので、大学などの専門性を地域に活かしていくことは大事ではないかと思います。
各自治体で公園面積の目標がありますが、これから公有地を増やすということは難しいので、民地をオープン化するという発想が重要になってくると思います。民地を優遇してパブリックとして使うというのはまだまだ事例が少なく、これからの可能性を感じます。
この前のパーキングデーも参加者として学生がいます。道路空間でアクションするような経験は機会がないとなかなかできないと思うので、社会実験などに行って自分から体験してみてほしいです。
そういう思いがあるのなら是非プレイヤーになってくれるといいなと思います。プレイヤーになる手段としては、例えばいいお店があったらバイトしてみるとか、一つ拠点をもって活動することで当事者意識を持てて動きやすくなると思います。
UDC2でも大学生が参加してくれることがよくありますが続かないという問題があります。学生という比較的スパンが短い期間にまちが劇的に変化することはなかなか難しいのですが、若い世代がまちづくりに興味を持ってくれるという話を教えてくれるだけで、こちら側も嬉しくて頑張れます。
私はけっこう笑顔率を推しています。マスクを外せるようになるまでは難しいですが……。
パーキングデーみたいなパブリックスペースをやろうとすると、定量的に表す手段は、アクティビティ調査や交通調査になると思います。他には、都市構造的な視点からだと街区ブロックの長さを見ていくというのもあります。例えば、メルボルンは100メートル×200メートルのグリッドでつくられていて、なかなか曲がれないという点ではウォーカブルと言えません。これを改善するために、路地裏のリノベーションで出会いを増やす交差点をつくって、細かい街区密度にしていくことが効いています。そういった手法の文献や統計的な調査を調べながら根拠を作っていくというのがあると思います。
定量的な話とはずれますが、デジタル空間とリアル空間の交流の違いは、偶然の出会いがあるかが大きいと思っています。あそこに行けば誰かに会えたり、なんかが起こるみたいな感覚が大事です。僕が下北沢に住んでいた時は、まちを歩くと誰かしらいて、他にも社会実験をしているところにいったら、業界柄、誰かしら視察にきているなんてこともあります。期待感をもたせることは重要な要素ですね。
泉山さんの報告を聞いて、認識をアップデートできたのが良かったです。聞いたことのない事例を聞けてとても勉強になりました。特に道路だけではなく、民地側と一緒にやっていくようなアプローチは発見がありました。
ありがとうございました。私はウォーカブルの専門ではないですが、興味を持たれる方が増えてきたということもあり良い事例を集めているところです。色々な実践の中での模索を共有できたことは良かったと思います。皆さんの模索が今後の日本のウォーカブルをつくっていくと思いますし、ウォーカブルは研究だけではなく、実践していかないといけないということを再確認できました。
民間とどう手を取り合うのかという話になると、行政の人達はよく「商店会のひとと一緒に~」という発言をされますが、その時点で解像度が荒く危険な括り方だと思います。「商店会」は人ではないので、その時点でぼやっとしている印象を受けます。その辺りを具体的にしていくことがプレイスメイキング実現への一歩だと思います。一方で、現場でやっていると、あまりにも顔が見えすぎるため、何でもかんでも特定の人ばかりにお願いするという現象が起きます。最初は良いですが、数年たつと「なんで自分ばかり」と疲れてしまう。具体的に顔が見えすぎてしまうことにもデメリットはあるので、バランスは考えないといけません。ひとまず公と民がもうワンステップ手を取り合うべきだという結論になったのは良かったなと思います。
ハンディキャップがある方の交通や商店での搬出入等、都市生活ではどうしても車が必要なシーンがあるからだと思います。
道路を廃止して広場や公園としている事例も出てきています。最近では今年4月、大阪の中ノ島通りが公園化されています。
車移動が基本の地域では、車優先でないまちづくりにすると車利用者の生活が不便になると思います。クレームも出てくるかと思います。しかし、車依存社会は便利ですが他の弊害(環境問題や交通事故や人々の健康)も多いので、必ずしも不便=悪ではないと考えています。
Place Gameは基本的にはPlace Game ガイドを見ていただき、各自で実施していただくことを想定しております。ただ、Placemakng JapanでPlace Gameをサポートする場合は、以下の3パターンをベースに主催者とともに役割分担等条件を検討できればと考えております。
A.主催者がガイドを読んで実施する(自立型)。アンケートフォームでフィードバックをいただく。
B.主催者がガイドを読んで実施するのに助言をする(アドバイザー型)※アドバイザリー契約や費用が必要
C.プレイスゲームの企画運営をPlacemaking Japanに依頼したい(委託型)※業務委託契約や費用が必要
問い合わせはソトノバまでお願いします。
みちを通る人と、お店の中にいる人双方が対象だと思います。田中元子さんの”1階づくりはまちづくり”の思想から来ており、「建物内部に多くの人がいるまちよりも、街中に人々が出歩いているようなまちに豊かさを感じられるのではないか」と懇談会で議論されていました。
歩行者天国であれば、車両が入ってこないことと、有事の際に緊急車両が入ってくるときに、歩行者を退避させられることは最低限求められると思います。
行きたくなる魅力的なお店があるかどうかかな、と思います。
駅前の歩行者空間かなと思います。街の中心地が駅の場合が多いので、多くの歩行者が立ち寄る。そこに、広場や道路、公園、空地などが歩行者に使われる空間になれば、インパクトは一番でかいと思います。歩行者が多い場所に広場空間などパブリックスペース活用をするのが一番インパクトがありやりやすい形になります。
たとえデジタル化が進んでも、歩くことを楽しめる都市空間というものは重要だと思っています。個人的には、機器がなくても都市空間だけでも楽しめる空間を目指した方がいいと思っています(私は人間らしい生活をしたい派なので)。
第4の居場所(フォースプレイス)としてネット空間があります。人は現実空間にいても頭はネット空間にあるというのがあります。オンオフの切り替えは日本人は弱いように思いますが、人が歩かない都市は魅力的ではないと思います。デジタルと付き合いながらも、自宅でできるものと、都市の中で仮想空間を使用したエンタメや遊びなどは都市に出かける目的地の一つになるものもあると思います。人が何を望んでいくか、好んでいくかによるかもしれません。
例えば、ニューヨークでは、中心市街地の中の道路構造令をUrban Street Design Guideにまとめています。サンフランシスコでも、Better Street Planがストリートごとのデザインガイドラインになっていて、商業系ストリート、住宅系ストリートとストリートの種類と必要なデザインが規定されています。日本でも自治体ごとに道路構造令を設定できるようになっていますが、その例はまだありません。ほこみちのように、特例区域だけ道路構造令を変えていくというのがまず第一ステップだともいます。
海外都市も車社会が進んでいるので、それをどう展開するかは共通のイシューだと思います。ただ、車をゼロにすることは難しいですし、ゼロにするという話ではないと思います。優先順位に車ではなく、人、次に、自転車や公共交通、3番目に荷捌きやサービス、最後にパーソナルモビリティという順位づけが重要です。また、道路を使用している人のキャパシティが需要で、車だけでは人が利用するには道路に対する面積を多く使用します。自転車や公共交通を導入すると、その面積や移動は効率化され、結果的に道路空間に使用する人のキャパシティが上がるという考え方です。マルチモーダルなストリートにどう変えていくかという話かなと思います。
私もフランスの地方都市に行ったときに同じ感想を抱きました。中心部の外側は車社会でもいいと思っています。環状道路が必要ですよね。
おっしゃる通りだと思います。ロードサイドショップが並ぶようなところは歩いていても景色が全く変わらず面白くないですよね。
車道を活用するということは、自動車の減少や路上駐車スペースの集約化(荷捌き含め)によるカーブサイド(車1車線分)の活用など、車道から歩行者空間へのニーズがあるかどうかがポイントだと思います。もう一つは都市の交通網の中で、歩行者中心にした方が良いという位置付けをネットワークの中でどう持てるかではないでしょうか。
むしろ、そのような方々でも出歩きたくなるようなまちづくりが大切で、ウォーカブルの目的なのだと思います。
まちなかに人も住んでいく建物用途の多様性が重要だと思いますし、それなくして、ウォーカブルなまちなかはできないですよね。スペイン・バルセロナのスーパーブロックは、9街区の内側のストリートは歩行者中心の空間にし、住民が好きに使えるようになっています。都市部でも人が住み、地域に関わる構造が必要だと思います。あとは市民に使えるパブリックスペースを視覚化し、使い方を示したり、手引きにすることも大事だと思います。
不勉強な分野なので頑張って勉強します。
万歩計と連動したウォーカブルポイントなどは重要な視点だと思います。都市や市民が健康になりますし、ウォーカブルの基本は歩く。インスタなどで多くシェアしたくなる(シェアラブル:Sharable)場所は、目的地とイメージ形成の上で重要ですね。
日本でも目指すところは同じだと思います。個人的には温泉街も街歩きできるところの方が好きです。長門湯本が道路交通の在り方を変えて都市再生に取り組んでいるのが象徴的だと思いました。
観光においても強い目的地がある点でも、ウォーカブルとも親和性高いともいます。ただ、多くの観光地が建物(ホテルや施設)に囲い込み型になりがちで、目的を果たしたら、ホテルでゆっくりするなどになっています。もう少し街の中を歩き、楽しむ観光サードプレイスのような場所がもっとあってもいいと思います。また市民が楽しんでいる風景もまたその街らしさを感じ、観光客としてはほっこりする一つの要素だと思います。