まちづくりトークは、UDC2関係者に限らず広く市民の方々と一緒に柏のまちづくりに関係するテーマについて、知見を深め交流の場となることを目的としています。
今回のまちづくりトークでは、柏セントラルウォーカブルビジョンの公開記念に併せて、本ビジョンの紹介をしつつ、柏セントラルにおけるウォーカブルなまちづくりを実践的に進めていくために、ゲストスピーカーによる他都市の取組事例紹介やクロストークを実施いたしました。
以下に、当日の内容をご紹介します。
1.概要
・タイトル:柏セントラルにおけるウォーカブルの実践に向けて
・日時:2024年2月20日(火)18:30‐20:30
・形式:オンライン(ZOOMウェビナー)+ 現地会場(京北ホール)
・内容:1部 柏セントラルウォーカブルビジョンについて
2部 ゲストレクチャー
3部 クロストーク
・事前申込み数:オンライン(173名)+ 現地会場(45名)
・当日参加者:オンライン(160名)+ 現地会場(35名)
・参加費:無料
・主催:一般社団法人柏アーバンデザインセンター(UDC2)
・1部 報告者:
梅岡 恒治 |柏アーバンデザインセンターディレクター
・2部 ゲストスピーカー:
大藪 善久 氏|株式会社SOCI 代表
・3部 クロストーク:
ファシリテーター:前田 英寿氏|UDC2副センター長・芝浦工業大学 教授
ゲスト:大藪 善久 氏|株式会社SOCI 代表
井桁 由貴氏|東京大学大学院新領域創成科学研究科 特任研究員
梅岡 恒治|UDC2ディレクター・梅岡設計事務所 代表
2.当日の動画
動画はこちらから↓
→動画その1:柏セントラルウォーカブルビジョンについて|梅岡
3.ゲストレクチャー要旨
ゲストレクチャーでは、大藪さんから沼津で関わってきた事業についての紹介をしていただきました。
◆まちづくりの基本姿勢
まちづくりでは以下の3つを大事にしている。
・PUBLIC:「公共」を「総私」としてとらえる
・PROCESS:「まち」と「わたし」のものがたりをつなぐ
・PROTOTYPE:「実践」と「理論」の循環をつくる
◆沼津市のまちづくりの概要
沼津市は、人口15万人で、山と海に挟まれており密度が高い立地。
2018年から沼津中心市街地まちづくり戦略(600m四方)を進めている。位置づけはビッグビジョン。100年の計としての鉄道高架化のプロジェクトが進められ、それに併せて、公共空間再整備計画・都市空間デザインガイドラインを策定していった。国交省が2019年に「ウォーカブル」ということをいうよりも前に動き始めていた。2021年からは社会実験「OPEN NUMAZU Street」を始めた。
鉄道高架化のプロジェクトについては、改札を高架にして、北口と南口を繋ぎ、併せて駅前を区画整理する。当時検討にあたっては、姫路の駅前広場を参考にしていた。ハードを作りながらソフトも同時にやっていく点が姫路と少し違うところ。変化を実感しないと市民も民間事業者もついてこないと考えていた。
実施にあたっては、短期・中期・長期のまちづくりを立てて、プローブパーソン調査やスペースシンタックスといったポテンシャルの調査(現況分析)を実施した。実践にあたっては、「どこからやるか」に気をつかった。人がいるところに施策をうとう、ということで、現況分析を基に、まちづくりのシナリオを作った。「実践する手順・施策・狙う効果」を描き共有することをした。
◆中心市街地まちづくり戦略について
中心市街地まちづくり戦略では、公共と民間双方が取り組めるように、沼津市が取組む「公共空間再編整備計画」と民間と沼津市が取組む「都市空間デザインガイドライン」の2つをつくった。
「公共空間再編整備計画」としては、「まちの現況分析→まちづくりシナリオ→公共空間の再編」という流れ。まちづくりシナリオでは、点:目的地を作る(つかう・つくる)、線:街路でつなぐ(つながる)、面:エリア全体の魅力を高める(ひろがる)のステップが大切。まちづくりシナリオでは、今年から来年で見直しを進めており、シナリオも更新していくことが大切。各街路空間については、リンク&プレイスの考え方に基づいて、通行(リンク)機能と滞在(プレイス)機能のマトリクスをつくって、性格付けを行った。
「都市空間デザインガイドライン」では、構成要素を変えている。6つの空間タイプを設定し、公共空間の再編方針とリンクさせている。ヒト中心の都市空間に必要な3つの要素として、点:アクティビティ、線:ストリート、面:マネージメントという設定をしている。
ヒト中心の都市空間を実現するために、整備計画とガイドラインの2つの一体的な取組みにしている。
これから地区計画や景観計画と紐づけてインセンティブを与える仕組みを検討。
社会実験によるアジャイル的な検証システムを目指す。
◆!OPEN NUMAZU!について
戦略的な検証サイクルとして、「!OPEN NUMAZU!」と名付けた、公共空間をひらく 未来のまちなかの風景を「日常」へとつなげる社会実験を実施。
2022年には、道路車線を将来的に1車線減らす予定で、社会実験を実施。目的としては、社会実験を通して、未来の風景を埋め込むこと。イベント化しないための運営・調査と、今後に繋がる仕掛けを大事にしている。デザインガイドラインが実現する未来を示す。
社会実験の什器は、群にしたので、まちなかでキャラバン的に活用。オリジナルでつくって、ストックにしている。可動式にしていることで、色々なところで活用できる。思想が統一されて伝わるところが大事
第2弾は地元プレイヤーが運営したことで、きめ細やかな対応ができた。2023年はウィークエンドに実施。テーマを別々に地元の人たちが設定した。
2023年の10月には、「OPNENUMAZU PARKLET」を実施。ストリートで群の風景を作っていたところが、固定物になって帰ってきた。2.5m×30m程度の規模で1年半の間実施。
沼津には駅前に緑が少なく、緑が求められていたのでパークレットに設置。植栽を植えるのは地元の高校生と一緒に実施。空間を作ってもエリアマネジメントにチャレンジしないといけない。高校生の動きをきっかけに、周辺の民間事業者を巻き込んでいきたい。まちをどうHACKしていくかを議論している。
今年度以降は、パークレット設置及び検証実験(R5年度~)を踏まえて、中期整備計画(R6年度~)をアップデートしていく。
◆ウォーカブルをすすめるためのヒント
・まちづくりのシナリオ(戦術)をつくる
ビジョンや戦略の次にどこから何から手をつけるかのシナリオづくり。市民が理解していることが大事。
・「大きいまちづくり」×「小さいまちづくり」
ハード整備主体の公共空間再編と、民間主体の取り組みや仕掛けをいかに掛け算できるか「まちのものがたりと私のものがたり」。沼津では、リノベーションまちづくりが盛んなので、中心市街地まちづくり戦略×リノベまちづくりなど。
・社会実験をシステムとして実装する
単発で終わらせないための仕掛けを埋め込む。キャラバン的な発想や、プレイヤーでつなぐ 出店者のメリットを最大化するための仕掛け。フローではなく、ストック的な発想が大事。
・市民・学生・プレイヤーを徹底的に巻き込む
巻き込みやすい仕掛けをつくる 社会実験のシステム化もその一つ。まちづくりの合言葉を作り、広報を行う。徹底的に「面白がる」ことで広げることが大事 高校生の活躍の場をつくる。
4.クロストーク要旨
◆登壇者の意見交換
・梅岡:柏の街、色々な街路に特徴はあるが、それに対して評価付けしにくい。どこから取り組めば良いか。どういう風にとらえれば良いか。
⇒大藪:リンクは車がメイン。プレイスはヒト。分かりやすく言うとそんな感じ。どこにプレイス性を持たせるか、柏の街は分かりやすい気がする。一方、分かりにくいのは、そぞろ歩きするような楽しい移動と、ただの通行の移動があるが、そこが分からなかった。解像度を高く歩行体系見ると、ヒントになるかなと思う。
・前田:ウォーカブルで博士論文を完成させた井桁さんにお話を聞きたい。
⇒井桁:ウォーカブルは目的ではなく手段だと思っている。ウォーカブルな街を作って、その後で何をしたいか、を考えることが大事。回遊性を高めることが目的でそのためにウォーカビリティを高めていく。柏ではこれから実践していくにあたって、ウォーカブルを手段としていくとき、どう調査してフィードバックしていくのか。沼津は社会実験をして、検証していくという話だったが、交通量やアクティビティかと思ったが、今後、どんなデータを取って、どう評価するのか。それをデザインや施策に繋げていくのか。
⇒大藪:データは怖いところもある。例えば沼津では誰も歩いていないところに、什器を置けば、通行量は増えるし、満足度も増えるというのは当然。データを取り、施策の実施に向けて動くためにドライブするための検証。ホントは知りたい指標は2つある。柏は通行量たくさんある中で、まちの幸福度だったり見えにくい指標あるはず。交通量は地方都市の場合は目標になりやすいが、柏はもう少し踏み込んで「喜び」や「楽しさ」を調べるのもあるのかなと思っていた。
・前田:シナリオや小さなアクションの重要性があったが、ウォーカブルビジョンを進めていくために何をしたら良いか。大藪さんのプランを聞いていると、駅と公園を結ぶというシンプルな考え方を感じた。柏だと何かを、柏に関わられていた梅岡さんと井桁さんに聞きたい。
⇒梅岡:社会実験で市役所周辺のエリアを実施したが、遠く離れたところの目的地性を高めていくが大事。大藪さんの話を聞いて、点にまずアプローチしていかないといけないと思った。
⇒井桁:博士論文を書く過程で、何よりもまず安全であると感じられることが大事。そうすると人は歩きたくなる。まずはそこをケアして付加価値を付けていくことが大事では。
・前田:商業都市から融合都市に変わろうとしている柏の街、これからハードが動いていく中で、柏セントラルの構造を変えていかないといけないのではないか。そんななかで、ウォーカブルを推進していくためにはまず何をしたら良いかということを大藪さんにお聞きしたい。
⇒大藪:点や安全は大事。まちの構造が変わる時に、次の50年の都市構造が変わるので徹底した議論が必要。東西の分断や、ストリートの個性が薄いように感じた。まちの構造が分かりにくい。これまでの柏での実験はゲリラ戦をしかけていたと思う。戦術が大切。我々は線が見えてるから点をやった。点だけやるとゲリラ戦になる。まちの構造に被せてみることが大事。意外と複数の点を同時にやってみるような、小さいエリアごとに変えていくという取組みが有効かもしれない。遠回りに見えて、それが効いてくるのではないか。
⇒前田:柏は駅中心で分かりやすいけど、大藪さんの言うように、分かりにくくもある。姫路を例に挙げたが起終点が無いことは一つの理由。
Q:地区計画や景観計画と紐づけてインセンティブを得られるように、というお話について、どのようなインセンティブがあるのでしょうか?
⇒大藪:議論の途中ではあるが、インセンティブではなくて、満たしてくださいという縛りのほうがキツイ。駐車場出口の誘導とか。1階の入り口の作り方とか、民間と非常にもめたりする。
Q:ウォーカブルタウン構想の目的のひとつは、住民の健康促進や健康寿命延伸かと思います。わがまちはハード面ではウォーカビリティ高そうなので「住むだけで健康になるまち」を謳えればと思っていますが、どこからどのようにアプローチすれば良いでしょうか?
⇒井桁:質問者様のまちでは、どのような観点でウォーカブルであるのか把握できておりませんが、公衆衛生分野で策定されているウォーカビリティ指標から考えると、基本的には、歩いてアクセスできる範囲で生活ができる環境を整えるアプローチかと思われます。その上で、道路単体の歩きやすさ(滑りにくい路面の整備や段差の解消など)を高める、一度に長距離を歩くことが難しい人でも途中で休める空間を作る、というステップになると考えます。
なお、近年は都市計画分野で盛んにウォーカブルという言葉が用いられていますが、実は、ウォーカビリティは「ウォーカブルネイバーフッド(歩きやすい近隣環境)」という言葉から用いられ始めていました。特に米国の郊外などでは車がないと生活できず、肥満等の課題があり、歩いて暮らせる生活圏が重視されていたと考えられます。つまり、ウォーカブルは公衆衛生分野(健康観点)から始まったと考えています。
Q:沼津ではまちなかのエリア価値向上のためにLink&placeを用いたエリア戦略を取り入れたとの事ですが、この実施にあたっての戦略策定にどれくらいの予算がかかりましたでしょうか。地区交通の整備にどれくらいの予算が沼津市側で、商店街側などではどれくらいの予算的負担をしてもらう必要がありますでしょうか。
⇒大藪:商店街側の負担がない。URと沼津市の双方が出している。継続性という意味で効いていたと思う。
Q:市民・学生・プレイヤーを巻き込む具体的な手法(これが効果的だった!)があれば教えていただきたいです!^^!
⇒大藪:色々とやって、ようやく目が出る。これが効果的だった、は教えて欲しいくらい。浸透することが大事。広報を徹底的に頑張る。KPIが報われない。
⇒梅岡:やりたい人が多いように思う。カシワグリーンデイを見ていると、柏の特徴で強みだと思う。
⇒前田:市民の参加意識が強い。非常に積極的。だからこそアーバンデザインセンターが続けられているのではないか。
・前田:ウォーカブルの先。融合して住めるようにするために、ウォーカブルを入れていく。沼津は?
⇒大藪:地方都市では「にぎわい」がゴールになっている。柏の場合は選択肢を増やさないといけない。街に根差して暮らしていくことが多様になっている。良い時代になって来た。自分がやっていることが人のためになっているようなことがやりやすい時代になっている。それが簡単案意味ではゴールだと思ってやっている。
・前田:大藪さんが話されたように「私」が集合して「公共」になる、自分のまちとどれだけ感じてもらえるか。生き残るためにはこうしたものを受容していかないといけない。
・前田:大藪さんの言葉を借りれば、社会実験をすることでアジャイルに戦略を進めていく。柏はビジョンを持って、形にしていくために社会実験を繰り返して来た。沼津は都市空間計画があって、それを一つずつ実現するためにアプローチしている。人が参加しやすい、デザインが洗練されている。これからのまちづくりを牽引していくだろうし、柏の駅回りも土建的に動いていくのだけど、デザインを良くしていかないと人はついていかない。
後日回答Q&A
Q1:柏のペデストリアンデッキでは以前、ベンチを置いたりして公共空間の利便性を高めました。休日や昼間は狙い通りでしたが、夜になると酔客等がたむろし、望ましくない環境でした。ウオーカブルなまちづくりでは、ナイトタイムの課題(酔客対応等)についてどうお考えでしょうか。また沼津ではどうナイトタイムの課題を克服したのでしょうか。
⇒A1:梅岡:柏セントラルウォーカブルビジョンで掲げているテーマ3やテーマ4の方針で挙げているような安全・安心の取組みも、夜に歩きやすい街にするためには、必要と考えています。具体的には、防犯パトロールや防犯カメラ、場所の利用制限なども求められると考えられます。
大藪:ナイトタイムのアクティビティとして、外で飲酒したり、飲酒後に外で会話を楽しんだりということはむしろ積極的に進めるべき内容だと考えています。そのこと自体が問題というより、振る舞いの仕方やマナーの問題のように感じます。うまく自制ある行動を促すためには、人通りから離れたところではなく、目につくところに設置するなど、滞留空間の配置や什器のデザインなどを工夫する余地があると思います。
Q2:ウォーカブルの取組について、具体的な数値目標はありますか?どんな定量的な数値を達成できれば、「成功」となりますか? (定性情報は除いて) また、多くの観点があるなかで、数値目標はどのように調整されますか? 最終的に( or 経過的に)、取組の「結果」をどう振り返り、 誰が「成功」「成功未達」と判断するのですか?
⇒A2:井桁:ウォーカビリティを測る指標としては国内外でさまざまな指標が開発されています。国内では、国土交通省が公開している「まちなかの居心地の良さを測る指標」や、日建設計総合研究所が開発した「Walkability Index」などが用いられています。例えば、まちなかの居心地の良さを測る指標では、土地利用、滞在しやすさや歩きやすさのほか、景観・雰囲気、アクセスのしやすさなどが具体的な指標として掲げられています。ただし、どの指標を重視し、その成功を判断するかについては、各自治体・各都市に委ねられている状況で、柏ならではの数値目標を検討していく必要があると考えます。
Q3:柏のウォーカブル実験で、結論として実際に歩行者交通量が増えなかったとのお話がありました。ただ歩行者の満足度が上がっているならば、実験は成功だと思います。賑わいの評価基準としては歩行者の増加だけでなく、歩行者の満足度で測るような指標もありますでしょうか。
⇒A3:井桁:歩行者の満足度を評価指標として掲げている自治体はいくつか見られます。例えば、広島市では都市再生整備計画の中で、歩行環境の満足度をKPIに掲げています。そのほか、歩行者の満足度からウォーカビリティ評価を試みる研究もいくつか見られます。
また、歩行者の主観を尋ねる指標としては、公衆衛生分野で開発された「国際標準化身体活動質問紙環境尺度」という質問票等が挙げられますが、ここでは「近所を歩くと、興味をひかれるもの(きれいな景観、楽しい景観など)がたくさんあるか」といった質問が主で、直接的に「満足度」を尋ねる項目はありません。
Q4:沼津のオリジナル什器、リースでなくストックとのお話でしたが、使用してない時はどちらに?モックでいろいろ作りたいのですが、保管場所に頭を悩ませてます。
⇒A4:大藪:保管場所は僕らもいつも頭を悩ませます。沼津の什器は一時期廃校となった小学校に倉庫的に置かせてもらいましたが、湿度が高く傷んでしまうこともありました。いまは商店街に常設に近い形で置いています。常に使用するということが、実はいちばんの解決策かなと思います。
Q5:ウォーカブルで「にぎわい」が実現すると街に暮らす人は幸せになれるのでしょうか?通行量と店舗の売り上げが増えると商業者さんは潤うと思うけど、人口の多くは商業者さんではないので、そこが気になります。
⇒A5:梅岡:「にぎわい」の意図としては、多くの市民が集い、憩えるという意味での「にぎわい」(テーマ4「空間・景観」の改善から生まれるもの)も含まれると考えているため、商業者だけでない方々の暮らしの改善にもつながると考えています。
Q6:ウォーカブルビジョンは柏市の計画にはどのように位置づけられていくイメージでしょうか。ビジョン策定への市の関わりも含めて、もし具体的なイメージや予定があれば教えてください。
⇒A6:梅岡:あくまで本ビジョンは市民の方々の意見を踏まえて、理想的なウォーカブルなまちとして、柏セントラルの未来を描いたビジョンとなるため、今のところ市の計画に位置付ける予定はありません。
Q7:こういった取り組み(特にハードな面においては)って、地権者、地主の説得、理解、合意が重要かと思います。どのようにしたら口説けますか?特に駅前は収益性重視してなかなかこういったサステナブルなまちづくりへの理解を得られるのが難しいのかなあと思いました。結局は地主のための再開発や街づくりにならざるをえないでしょうか。
⇒A7:梅岡:UDC2では、正直ハード整備に繋がる合意、理解まで繋がるようなアクションができていない部分はあるのですが、ビジョンを説明する上では、メリットを示しつつ地元関係者への説明まわりをすることが大事だと考えています。
Q8:ウォーカブルな取組みということで、市民が関われる取組はありますか?
⇒A8:梅岡:今回のウォーカブルビジョンのテーマ4でも紹介していますが、方針「地域ぐるみで管理・活用しながら質を高めていこう」のように、沿道植栽の管理や活用といった取組や、個人の健康意識の向上目的で歩く機会を増やすこと自体もまち全体のウォーカブルに繋がると考えています。
Q9:パークレットの意味は何でしょうか? 柏でも出来ますか?
⇒A9:梅岡:パークレットとは、車道の一部を転用して人のための空間を生み出す取組みのことを言います。柏でも検討の余地はあると思いますが、道路幅が狭いという課題があるのが現状です。
Q10:民間ガイドライン、地元はどの程度コミットしているのでしょうか?
⇒A10:大藪:ガイドラインで取り上げているのは、街路のパターンであり、具体的な街路はそれをもとにしながら個別にまちなみを考えていくようにしています。行政がつくったガイドラインをもとに、地元が個別解を考えていく、そのタイミングでコミットしてもらうことを想定しています。
Q11:ウォーカブルの実践例を教えてもらう内容なんですね。ウォーカブルに対する理解を求めるというのが意図という感じでしょうか。
⇒A11:梅岡:今回のトークイベントは、仰る通りウォーカブルに対する理解を深めて頂き、今回公開したビジョンに共感していただき、実践に繋げていくこを目指しています。
Q12:ウォーカブルビジョンについて。これから高齢化が進みますます自動車の需要は増えると思います。周辺商業施設も高齢者の消費により成立つ部分が大きくなるでしょう。また自動運転社会になればより車でのアクセス性が高まると思います。その中で歩行者の回遊性と、駅や商業施設への車のアクセス性をどう考えてますでしょうか。
⇒A12:梅岡:ビジョンのポイントでも紹介していますが、柏セントラルの場合、メリハリのある交通体系が大事だと考えており、歩行者優先の通りや自動車によるアクセスの利便性が高い通りなど通りに応じた場合分けをすることが必要だと考えています。
Q13:現役建築学生です。学生など地元の方々を巻き込むことが大事というお話がありましたが、具体的にどのように声をかけ繋がっていったのかお聞きしたいです。こういった活動に興味があり、どんな形であれ携わりたいのですが、自分のような学生と主催の方を繋ぐプラットフォームがあったら嬉しいなと思いました。
⇒A13:大藪:声がけする相手によって、もちろんそのアプローチがさまざまです。商店街だったらまずは組合から、プレイヤーは人伝てでも声かけをして出店してもらう、学生なら高校や大学の先生にまずはアプローチしています。まちなかでの取り組みを見える化することで、学生さんからお声がけいただく機会を設けることが大事だと思っています。
Q14:沼津は、高校生の他にどの様な市民の方々がこのまちづくりに参加しているのでしょうか。
⇒A14:大藪:商店街組合の方やリノベーションまちづくりに参加しているまちなかのプレイヤーの皆さん、また駅前の商業施設など方々が参加しています。
Q15:点と点を結ぶの考えについて。魅力的な点は新たに作れるようなものなのでしょうか。今あるものを魅力ある点として捉えるしかないのでしょうか。
⇒A15:大藪:どちらもありえると思います。沼津のような地方都市ではポテンシャルのあるところから取り組むのが戦略的によいと考え実践しています。柏などであれば、たとえば小さい広場から魅力的な点を生み出していくのも可能かなと思いました。
Q16:パークレットの取組みにおいて、自転車の交通という点に関してはどのように意識してデザインされているかお聞きしたいです。
⇒A16:大藪:OPENNUMAZUstreetの時もパークレットの時も、自転車交通とセットで検討しました。具体的には車道側に自転車通行帯をしっかりと確保しながら、歩道ではなく通行帯を通ってもらうように促す装置としても機能させることを狙っています。
Q17:沼津の例では、誰が?という主語があまり感じかなったですが、補足いただけるとありがたいです。柏のほうは人が見えるんですが(ただ、どこに住んでる人かは?)
⇒A17:大藪:パブリックスペースにおいて、ゲスト、キャスト、プレイヤーの関わりがあると思っています。ゲスト的な利用であれば、もちろん周辺の市民や駅前利用者が対象になります。キャストというのは、パブリックスペースにおいて自分の生活の延長でやりたいことをやってもらう人と定義しています。それが高校生による植栽だったりアート活動だったります。プレイヤーはパブリックスペースで出店などサービスを提供する人たちです。それらはまちなかの民間事業者さんが顔が見える形で繋がっています。
Q18:沼津の事例も柏の事例も素晴らしい取り組みだと思います。どちらも10年前からくらべると大分変ってきたと思います。さらに10年後により明るい街になってほしいです。沼津のシナリオも柏のウォーカブルビジョンもとても素敵でわくわくするまちづくりが描かれていました。他の地域でもこうしたまちづくりはできるものでしょうか?
⇒A18:梅岡:今回のビジョンで、4つのテーマの部分は、柏セントラルに限らず、ウォーカブルなまちづくりに繋がる一般的な取組みを挙げていますので、是非ご参考頂けると幸いです。
Q19:まちづくりを進めるうえで、コロナの影響はありましたか?
⇒A19:梅岡:明確にコロナが影響したということは断言できませんが、柏の場合、百貨店が再開発から抜けるということがあったり、オンラインとの併用を踏まえた会議・イベント運営などの変化があったことは事実です。
Q20:柏、沼津のウォーカブル検討の発注元、補助金は利用しているか。計画策定は2年間で十分足りたか。
⇒A20:梅岡:柏のウォーカブルビジョンについては、UDC2が主体として策定しており、「官民連携まちなか再生推進事業」の補助金を活用して調査等を実施しています。実施に向けた調査については、より時間がかかると考えています。
大藪:補助金を利用して検討しています。時間をかければよりよい計画になるかもしれませんが、アジャイル的に検討して今後変えることを前提に、計画を早めに作って動かしていくことのほうが重要であると考えています。